ネコミミにひかりあれ

読みもの、エッセイ、そういったものを書いています。

古い窓

昔はこんなに人とつながらないインターネットを見ていた。

ブラウザと名付けた人は偉いと思う。窓の向こうで、様々な人間が色々な言葉を書くのをじっと眺めていた。毎日よく話す友達。あまり話さないけど名前を知ってる子。まったく知らない人。
皆が「リアタイ」「リアル」と呼んでいた縦に長いレイアウトの日記を、私もやっていた。
何を書いていたのかもう忘れたけど、今でいう空中リプライ、空リプのようなことも書いていた気がする。それで、よく話す友達の様子がおかしかったら翌日それについて話してみたり、したのではなかったか。

窓の向こうには様々な人がいたけど、あまりインターネットで、直接的に窓の向こうに触ろうとは思わなかった。
自分も触られなかったから、ある種不可侵条約みたいなものがあったのかもしれない。
ここはこの人の窓。ここは私の窓。
会うときは、窓ではないところ。現実世界か、チャットか、お絵描きBBSか。いずれにせよ、書くところと話すところはまったく別の場所だった。誰からもコメントされない、点数もつかない、つながらないインターネット。

この間、高名な女性学者のtwitterの書き込みを見ていたら、その人に対して気楽に罵詈雑言が送られていてびっくりした。テレビの前で悪口を言うのとは違う。その人がリプライ通知をオンにしていたら、罵詈雑言が送られるたびスマートフォンが震えて教えてくれるんだけど。
とても怖くてそんなことは出来ない。
昔の、古い窓のことを覚えているから。

どこにもつながらないインターネット。つながらない古い窓。
窓の向こうの、顔も知らないお姉さんが使っていた化粧品に憧れて手に取ったことがあるけど、それはそのお姉さんの人生には何も関係がない。私には私の、お姉さんにはお姉さんの、誰にも侵されない窓があるだけだった。

リアタイやリアルをもう一回やりたいとは思わないけど、誰かの心情が静かに綴られた場所は、いまとても懐かしいと思う。