ネコミミにひかりあれ

エッセイを書いています。

取り返しがつかない変身

髪を染めた。
染めたと言っても一部分で、いわゆるインナーカラーだし、美容師に提案されたように姫カットのサイドの部分に入れるとか髪の色を一周させるとかはやらなかった。提案されたような形で染めても良かったのだけど、ちょっとだけ恥ずかしさが勝ってしまった。

なんで髪を染めたのか、と聞かれたら「不可逆な状態にしたかった」というふうに答えると思う。
もう取り返しがつかないぐらいに、自分を変えてみたかった。

最近、自分の仕事の失敗が積み重なって、職場での信頼貯金がほぼゼロになってしまったように思っている。自分の悪癖だから仕方ないと思いながら、ここから信用貯金を再度貯めていくのは結構しんどそうだと挫けそうになる。こつこつやっていくしかないのだけど。そこで、今までの自分をリセットして、新しい自分として事に当たりたい。私にはリセット願望や変身願望があるので、こういうふうな思考になってしまう。0か100かの極端な思考をやめた方がいいと思うが、うまくいかない。

自分を変えるのは大変だけど、外見を変えるのはまあまあ出来る。
髪を伸ばしているので、例えばざっくりボブカットにしたら「すごく変わった」ことになるだろう。痩せるのは大変だけど、服装の傾向をある日いきなりロリィタにするとかは出来ないことはない。私は普段ざっくり分けるとモードのあたりにいると思うが、それをコンサバに寄せてもそこまで変化はない。だけどロリィタに寄せたらそれは明確な変化になるだろう。

なんか、そのようにして、自分が明確に変わったと思うことをしたかった。
その一手がインナーカラーだった。

当日は朝一に予約を取ってもらったのに、終わったのはお昼過ぎだった。
「ファーストブリーチは色が抜けにくい」とのことで、私は大学生ごろに一度髪を染めているがブリーチは初めてだったので時間がかかったとのことだった。
何はともあれ、眉上ぱっつんで姫カットでインナーカラーを入れたロングヘアの女が爆誕した。おまけにメガネをかけている。
ここまで要素を持ったわかりやすいキャラクターも今日日見かけない気がする。私の観測範囲が狭いのかもしれない。

同居している両親に特に何もコメントされていないので、多分会社でも気づかれないだろう。しかし鏡を見ると確かに私の髪の一部分は明るいピンクになっていて、変身しているのが面白い。