ネコミミにひかりあれ

エッセイを書いています。

はじめての入退院日記(2泊3日)

手術した後の傷がこんなに痛むってことを、32歳にして初めて知った。

手帳に初めて「手術」と書いた。

4月末頃、足の付け根が変に膨らんでいることに気がついた。ぽよぽよと弾力があり、痛みはまったく無い。常時膨らんでいるわけではないので、一過性のものだろう。そう考えていたけれど、周囲の勧めでかかりつけの内科医を受診することになった。
ゴールデンウィークが終わった頃、出勤前に病院に寄ることにした。久しぶりに会った内科医には「紹介状を書くから、すぐに大きい病院へ行きなさい」と言われてしまった。曰く「脱腸だったら大変だから」。
紹介された大病院でCTスキャンの予約を取り、撮影し、また後日指定された日に検査結果を聞きに行く。
「お腹の中に水が溜まっているようなので、手術しましょう」
そのようにして唐突に、人生初の入院と手術が決まったのだった。

ukaのトラベルセットを持って行った

それからの3週間は「手術」を意識したものになった。
自分が進めていた仕事の簡単な引き継ぎ資料を作り、有給申請をした。ピルやプロテインは医者に禁止されたので飲めなくなり、運動から少し遠ざかった(やる気が出なくなったから…)。
入院日は平日休みと同じような感覚だった。持ち込んだ本をゆっくり読み、お茶を飲みながら優雅に手帳に書き物をする。こういう空白の贅沢な時間はたまらなく嬉しい。

人生初の入院食はきつねうどんだった

翌朝、手術着に着替えながら、ようやく実感がわいてくる。昨日までは現実感がなかったのだ。
麻酔が入ると後頭部にどろっと冷たい感触があり、…はっと気がつくと病室のベッドに寝かされていた。

みんなが思うやつ

ベッドから身を起こすと、手術した場所が熱くて痛い。自分が感じたことのない物理的な痛みだった。胃の痛みや帯状疱疹の痛みではない、腹を切っているという痛み。
このままベッドに寝ていても良くないだろう、と思い体を起こす。悶絶。その拍子に枕元で充電していたiPhoneが床に落ちてしまった。激痛に呻きながら拾うと、iPhoneの充電ケーブルの根元が折れてしまっていた。充電は30%を切っている。
痛む腹を押さえながらなんとか病院内のコンビニまで往復してケーブルを買ってきて、体力が尽きた。ベッドに寝転がるのも痛い。このあと夕食があるから、なんとか起きていたかったけど無理だった。

痛み止めにこんなに頼るとは

じくじく痛むお腹のために何度も体勢を変えながら夕食を食べ終わり、消灯の時間になる。こんな状態で眠れるだろうか、と寝てみると腰が痛い。傷をかばうあまり変に力が入っていて、どの体勢も痛くて眠れない。どうにか細切れの睡眠をとり、気がつくと朝になっていた。そして退院をして、今に至る。

退院する頃にはすっかりよくなっている…なんてことはなかった。痛み止めを飲んでこれなのだから、まだまだ痛い。退院してもそろりそろりと歩いてしまうし、ふとした瞬間にとても痛い。トイレに行くのも痛いし、咳をしても痛いのだ。だけど外科医も看護師も「手術当日が痛みのピークですよ」と言う。

あまり動けないので退院してすぐポケモン買った

二泊三日の入院と手術で、すぐに元通りになるはず、なんてことはない。傷はゆっくり治っていく、という当たり前のことを思い出した。小学生の頃、転んで切り傷だらけの頃は当たり前のことだったのに。