ネコミミにひかりあれ

エッセイを書いています。

ラジオのように書き出してもよい:若さが邪魔 / 若さを使い切る / 靴を磨く

たまに朝早く起きてスポーツジムのようなところに行くと、帰り道の電車にはたいてい中高生が乗っている。みんなの通学時間と被るらしい。
いまも毎日苦しいけど、学生の頃よりはマシかもしれない、と思う。あの頃、なぜかよくわからないけど未来がないという閉塞感が今よりも重たかった。

輝く若さが邪魔で仕方ない、と後年ムーンライダーズが歌っているのを聴いて、それだったんだ、と妙に納得した。
どこに行くのも自由で、何を言っても女子高生だからと珍しがられる、それは良かったかもしれないけど同時に「自分」にフォーカスされていなくて嫌だったのかもしれない。
ムーンライダーズ繋がりだともう一つ、なにかの折にムーンライダーズまわりのイラストをよく描かれている方の個展に行ったことがあった。
そこで「その歳でこういうものが好きだと珍しがられるでしょう、でもそれもあと数年で終わるよ」と言われたのを、嬉しいでも悲しいでもなく、納得したような気がする。
帰り道にその場にいた方と野良猫(地域猫)を触らせてもらって、私猫触ったの初めてです、とか言って新宿西口のJRと小田急が交わるところで別れたような気がする。
あれは四ツ谷だった。

それから何年も経った。あれってもう10年ぐらい前の出来事だと思う。大学生じゃなくなったし、ようやく御三方周りのライブに行っても若いという反応はされなくなった(そもそもあまり行かなくなったのもあるが)。
METAFIVEがお台場でやったライブの時なんて私が「えっ、そんな歳なんですか。お若いのに珍しい」なんて言う側だった。
嫌な大人のセリフじゃん!と後で振り返って恥ずかしかったけど後の祭りである。

最近仕事が忙しくてなかなかつらいんだけど、今日はドラフト会議の日だった。
最近ずっと野球を眺めているから贔屓の球団が誰を1位指名するのかはずっと気になっていた。
私なんかよりも責任感も社会性もありそうな男の子たち。
人生がそうやって決まっていくのは不思議だと思う。
わたしが疎んじていた若さを目一杯使い切って、使い切った後は経験で戦っていくんだろう。
もう尊敬しかないなって思う。

思いながら、贔屓の球団に入る人たちの顔を見る。来年も、楽しく野球を見させてくれ、と思う。

ドラフトの特番で、グローブを磨いている独立リーグの男の子を見た。
六畳一間のせっまい部屋で、恵まれた体をぎゅっと縮めてグローブを磨いていた。
道具を大事にしてるんだな、と思う。それで、ふと靴を磨きたくなったのでさっき磨いた。

いい靴はいいところへ連れて行ってくれる、とはどこの言葉だったか。
いい道具が、彼をいいところに連れていくだろうか。育成の指名があったと思う。