本当にいろんな世界を救ってきた。もちろん異世界転生をしているわけじゃないから、ゲームの話だ。
家には物心ついたころからファミリーコンピューターが置いてあって、
母親がドクターマリオをやっている横で2Pコンについていたマイクで邪魔したりしていた。
初めてはまり込んだゲームは、ポケモンだった。
コロコロコミックとコミックボンボンに影響されて、ポケモンとポケモンフォロワーを含むRPGばかりやっていたけど、
前情報なしに、なんとなくやってみたのがFFTA、「ファイナルファンタジー タクティクス アドバンス」だ。
住んでいる街が突如としてFFの世界になってしまう。
今でいう「異世界転生」のような話のなかで、主人公のマーシュは世界を元に戻すために奮起するが、
クラスで仲が良かった友達たちはそれぞれの理由から現実に戻ることに否定的で、敵対していく…。
みたいなストーリー。私は今だったら絶対にマーシュを憎むと思う。
それまではRPGばかりやっていたから、FFTAのシステムは新鮮だったし、戦闘を縛る「ロウ」の存在も面白かった。
しかしそれ以上に、遊んでいた時から10年は軽く経っているのに、ずっと心に残っているのは、
ラスボスとなったミュートと、それに迫るマーシュの会話だ。
現実世界ではいじめられっ子のミュートは、世界を元に戻したくない。
対してマーシュは、色々あるけど世界を現実に戻したいし、戻るべきだと思っている。
ミュートを倒せば世界が元に戻る。物語の最終盤で、マーシュが叫ぶ。
「本当の自分なんて、どこにもいないんだ!」
「今日まで積み重ねてきた自分が、自分なんだ!」
もうセリフの細部は思い出せないけど、これがえらく刺さった。
当時の私は「素敵な自分にいきなり変身できる」と心のどこかで思っていた。
それが叶わないことも知っていたけど、どこかでずっと期待していた。
大好きな漫画やゲームのように、ある日いきなり何かが起きて「素敵な自分」になれる、と。
そんなことはない、とマーシュが言う。
私が育て上げた、すごく強いユニットになったマーシュが言う。
本当の自分なんてどこにもいない。ここにいるのが本当のぼくだ、って。
気がつくとゲームボーイアドバンスに涙がぼろぼろ落ちていた。
私はこの私のまま生きてゆかねばならない。
文字にしてしまえば簡単で当たり前のことを、ゲームが、こんなにも強く教えてくれた。
もう一回あの衝撃を味わいたいけど、FFTAは現在もバーチャルコンソールにはない。
はやく色々なゲームがSwitchで遊べるようになってほしい。
そうしたら、いつでも私に迷った時、マーシュのセリフを反芻できるから。
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