ネコミミにひかりあれ

エッセイを書いています。

夜遊びは不得意だけど

bluenoteには恋人と付き合い始めてから行くようになった。
わたしはあらゆるものの門外漢だけどジャズも例に漏れず全く触れてこなかったジャンルで、かろうじてYMOを通じてフュージョンと呼ばれるものは聞いたというぐらいだった。
渡辺貞夫チック・コリアもさほど知らないのに聴いていいのだろうかと思いながら聴いて、でもその時々で行ったどのライブよりも「演奏されている」感じがあって、当たり前なんだけど感動したのだった。

コロナ禍のなか、海外のビッグネームの来日がどんどん中止になっていった。billboard live yokohamaのこけら落とし公演としてアナウンスされていたバート・バカラックの中止は、担当者の心中を思って本当に荒んだ気持ちになった。

菊地成孔がいつか、bluenoteから配信ライブを行った時に「ジャズの歌舞伎座ことブルーノート東京、開店以来最大の難関に立ち向かっているブルーノート東京に拍手を」と言ってたとき、いやほんとだよ、と思ったのだ。

ただコロナ禍で良かったことといえば、今回のように、素晴らしい国内のアーティストたちがそのジャズの歌舞伎座に出てくるようになったことだと思う。

ライブを聴きながらお酒と軽食を楽しんで、そのあと、余韻の残る席でもうすこし飲んで帰る、というのを愛している。恋人がそのように楽しんでいるから、わたしも倣っている。

二人とも夜遊びはあまりしない。夜は早く寝たい。
だけどこの日は偶然見つけてからお気に入りになった蕎麦屋まで行くことにした。
初めて行ったのは4年前で、コロナなんて何もなかった頃だった。業界人たちがたぶん朝まで飲むような店だ。

22時半閉店です、とすまなそうに言われた。
コロナの影響だという。

でも我々は夜遊びが不得意だから、もしかしてその程度のほうがいいのかもしれない。いつかこの店で飲みすぎて終電を逃したことがあったけど、途中駅まで帰って、それから歩いて帰った。

たまにそんな夜があってもよくて、できれば、いい音楽の後にこういうふうに蕎麦を食べられるといい。