ネコミミにひかりあれ

エッセイを書いています。

タイムマシーンはこない

両親が出会った頃、もちろん携帯電話なんてなかったから、待ち合わせの場所にはいつも母が一人でいた。父は最悪に時間にルーズな人で、大体待ち合わせ場所に電話がかかってくると「今出た」と、待ち合わせの時間を少し過ぎてから言うような感じだったという。
その二人が、時には母が一人で、暇を潰しに潰したのが今はもうないけど六本木の「クリスティ」というバーだという。ジュークボックスがあって、たぶん軽食を作ってくれて、当時流行っていたモータウンのレコードをよくかけてくれたという。

もしタイムマシーンが発明されたなら、その場に干渉しないタイプがいい。場を見守るだけでいい。真っ先に六本木の「クリスティ」へ行くだろう。
そして父を待つ母を眺めるのだ。

ところで、私は恋人の昔の話を聞くのがすごく好きだ。
自分と過ごしていない時間に思いを馳せて、今と違う恋人の姿形を想像するのが好きなのだと思う。いや、格好よく言ってみたけど、単純にストーカー気質なのだ。

今朝の夢で、大体このようなことをしていた:

  • 恋人が昔遊んだという山の話を聞いていた。
  • ふと目が覚めると幽体離脱のようになり、精神体だけは過去に飛べるという。それは昔の恋人と触れられるし、話せるが、精神体が現在に帰ってこられる保証はない。
  • 昔話に聞いたようなバスや電車を乗り継いで、なぜかバドミントンをやりにその山へ向かっていた。恋人の友達に混じって。
  • 私を知らない恋人と会話をしたが、ふと(昔を見つめるのではなく、いま現在の、これからの恋人を見たい)と思う。
  • それで、目が覚めて、なんとなく時刻や場所を確認した。
  • なぜか分からないけど(ここが本当に昨日までの自分と地続きなのだろうか)という不安があった。

それで、本当に起きた。普通に寝坊していて、今日の朝にやろうと思っていたことのおよそ7割はできなかった(運動はしたといえばしたし、これから酢キャベツを仕込まないといけないが…)。

原田知世の「時をかける少女」にそういう部分がある。

あなた 私のもとから
突然消えたりしないでね
二度とは会えない場所へ
ひとりで行かないと誓って
私は 私は さまよい人になる

夢の中でさまよい人になる前に帰ってこれた、そういうような気がする。夢の中でなら過去も未来もないのだが、でも、タイムマシーンって来ないんだ。CHARAも歌ってたし。