ネコミミにひかりあれ

読みもの、エッセイ、そういったものを書いています。

老後の先取りをしていた

3月に内定が出た企業への転職は、ゴールデンウィーク明けだった。
退職の手続きが終わってしまうと、初出社まで3週間程度時間があることになる。

いきなり空白の時間ができると、どう使っていいのかわからない。
大学受験が内部のテスト結果がよく年内に終わった時も、こんな気分だった。

この渦中でなければ、と思っても仕方がない。
私はなんでも「仕方ない」で片付けられるので、得な性分をしているなと思う。

住民票を取りに区役所へ行くと、暇そうなじいさんばあさんがちらほら座っていた。
みんなマスクをして、ぼんやりと窓口の案内板を見ている。
私もその仲間に入って、順番を待つ。

私も、知らない間にばあさんになっていた。

足腰はまだ丈夫だから、隣町までは歩いて行ける。
時間はあるけどお金は無駄遣いできないから、散歩はちょうどいい。
図書館で本を借りる。
これ読みたかったんだ、よかった。
スーパーに寄ると刺し身がおつとめ品になっていた。
それと漬物でご飯にしよう。
熱いお茶もあるといい。…

すべてのばあさんがそんな生活をしているとは思わない。
こんなの、フィクションのなかの「おばあさん」の過ごし方だ。
実際、祖母は歩いて区役所なんて行かなかったし、ボケてしまってからは本当によく食べた。

夢のような老後。
そんなものは多分、一生訪れない。

最近は、歩きすぎて軋んだ膝を伸ばしている。
こういうところに目が向くようになったのも、私がばあさんに近づいている証拠だろう。