ネコミミにひかりあれ

エッセイを書いています。

コーヒーと圧倒的自己肯定感

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毎朝コーヒーを買う習慣がついたのは、会社が入居しているビルの地下にセブンイレブンが入ったからだ。
皆がコーヒー片手にエレベーターに乗り込むようになったので、真似してみたところ、意外と心地よかった。
今のところ、セブンイレブン以外のコンビニでコーヒーを買ったことはない。近くにファミリーマートやローソンがあるというのに。会社の真下という理由以外に何か理由があるとすれば、それはコーヒーマシンである。

セブンイレブンのコーヒーマシンは、佐藤可士和がデザインしている。「分かりづらい」とテプラまみれになった哀れな筐体の画像を見たことがある。しかし私が惹かれるのは筐体ではなく、モニターに表示されるメッセージだ。
最初のゲームボーイのようなモノクロの画面に「ドリップしています」など、進捗を知らせる言葉と簡単な図柄が表示される。それをぼんやり眺めていると、ピピッと完成を知らせる電子音が鳴る。

「おいしいコーヒーが出来上がりました」

メッセージが表示された瞬間、私は衝撃を受けた。
このコーヒーは、生まれた瞬間から「おいしい」ことが決まっている。
圧倒的な自己肯定感。思わず写真を撮ってしまった。
表示される言葉は、単純に「コーヒーが出来上がりました」でもよかったはずだ。そこに「おいしい」と付け足したセブンイレブンの、すさまじい自信。

あたたかいコーヒーを片手に持ってエスカレーターを登りながら、ふと腑に落ちた。
自信は持っていたほうがいい。
思えば、食品はいつも自信満々だ。「おいしい」牛乳。ミミまで「おいしい」食パン。皆、自分のおいしさを自認し、誇りと自信を持っている。
私の場合は何だろう。文章が「書ける」人間、だろうか。

世の中には断言してしまった方がいいことが、きっとたくさんある。
セブンイレブンのコーヒーはその最たる例だ。どうせ飲むのなら「おいしい」コーヒーの方がいいに決まっている。
圧倒的な自信と自己肯定を見るために、またセブンイレブンに寄る朝が来る。